鏃(矢尻)についてのまとめ


分類 用途 機能 特徴 鏃の種類 矢羽
征矢 ―そや―
麻利矢 ―まりや―
軍陣用 射通す 細長い 鳥の舌 ―としのした
柳葉 ―やいば、やなぎば、りゅうよう
槙葉(楯の葉) ―まきのは
木葉
定角 ―じょうかく
つるはし
三立羽
甲矢 ―はや(右旋回)
乙矢 ―おとや(左旋回)
射砕く 扁平
鏃を持たない
金神頭 ―
上差矢 ―うわざしや―
尖矢 ―とがりや―
(鋒矢)
武将用 射通す 武名を広めるため
鏃に名前を刻む
平根 ―ひらね
尖根 ―とがりね
三立羽
狩矢 ――
(野矢)
狩猟用 射切る 扁平
二又などに分かれている
狩股(雁又) ―かりまた
大雁股
鏑矢 ―かぶらや
燕尾 ―えんび
四立羽
旋回させない
的矢 ―― 歩射競技用 射当てる 鏃を持たない 平題 ―いたつき 三立羽
引目矢 ―― 騎射競技用 射当てる 鏃を持たない 神頭 ―じんとう、じとう
引目 ―
響目 ―
三立羽

未分類の鏃 長根(ながね) 先細矢 蝿の尾 鑿根(のみね) 楯割(たてわり) 鋒先 疾雁矢(とかりや)
細能身(ほそのみ) 笹葉 剣頭形矢 鯖尾 腸繰(わたくり)

―用語説明―
古代の矢の長さは70〜90cm程、重量は50〜70gほど。
握り拳一つを一束(矢束)といい、源平時代の矢の長さは十二束が標準とされる。
矢柄(矢の本体)の素材は、古くは葦や柳、後に篠竹が主に使われる。
形状は主に3種類あり、
一般的な、全体の太さが均一の「一文字」、
矢先が太く、矢羽側が細くなる「杉成」、
中央が太く、両端が細い「麦粒」がある。
鏃・矢尻
(やじり)
矢の先に付いた穂先のこと。
大きさ、形状、用法等々により、様々な種類がある。
鏃の機能は4種類、「射通す」「射切る」「射当てる」「射砕く」である。
また主な矢尻には以下のようなものがある。
「尖矢(とがりや)」は貫通用、
「平根(ひらね)」は腸繰と呼ばれる形式に代表される、より殺傷(さっしょう)力のある物、
「雁股」は実用よりも儀礼的(ぎれいてき)な意味が強いとされているらしい。
征矢
(そや)
征矢は戦闘に用いる矢で、消耗品として一般の兵に対して用いるとされる。
武将を射る時は上差矢(尖矢)を用いる。
古くは麻利矢(まりや)とも呼ばれた。
上差矢
(うわざしや)
上差矢は戦闘に用いる矢で、武将を射る際に用いる。
鏃は大きく、見事武将を射抜いた際に、
敵味方に勇名が伝わるよう、射手の生国と名前が刻まれている。
射通す 鏃の機能の一つ。
主に征矢などの戦闘用に用いる鏃で、突き刺す事を目的としたもの。
矢羽は三立羽で、矢を旋回させて貫通効果を高められている。
射切る 鏃の機能の一つ。
征矢などは細長く尖らせることで、目標を射通すことを目的とするが、
狩矢などの狩猟用の場合、鏃を二又などにして内側に刃を付け、切ることを目的とする。
また他の矢は回転させる事で貫通力を増す工夫がなされているが、
射切る場合、回転させると本来の効果を損なうため、矢羽を四枚とし、矢を回転させない様にする。
狩の場合、毛皮も商品とするため、狙うのは胴ではなく首や足を射切る。
射当てる 鏃の機能の一つ。
金属の刃を持たない木製の鏃や鏑をつけたもので、当てる事のみを目的とするため、殺傷能力はない。
主に競技や神事の流鏑馬などの際に用いられる。
射砕く 鏃の機能の一つ。
射当てる事を目的とした鏑や神頭を金属製に変え、目標を砕くことを目的としたもの。
分類上は征矢に入るらしい。
鏑矢
(かぶらや)
雁又に鏑(かぶら)をつけたもの、鏑とは木や角を蕪形に加工して、中を空洞にしたものです。
数箇所に穴を開けられており、矢を飛ばすと穴に風が入り甲高い音を発する。
鎌倉時代では合戦の戦闘開始の合図として使い、「矢合せ」と呼ばれた。
また、いわゆる嚆矢(こうし)はこの鏑矢のことを言うそうです。
神頭
(じんとう、じとう)
流鏑馬などに用いる鏃、鏃といっても鏑のような木製の神頭を鏃の変りに用いる。
金神頭
神頭を金属製にした矢のこと。
征矢の一種で、射通すのではなく、“射砕く”ことを目的とする。
矢羽
(やばね)
矢羽に用いる羽根は、鷲、鷹、鴾(朱鷺)のものが最上とされる。
ほかは雑羽とされる。
三立羽
(みたてば)
矢羽の数が三つのもので、矢を旋回させる工夫がこらされている。
甲矢(はや)と乙矢(おとや)があり、甲矢は右旋回、乙矢は左旋回する。
また甲矢と乙矢は必ずセットで用いる。
四立羽
(よたてば)
矢羽の数が四つのもので、三立羽とは異なり、回転させない工夫がこらされている。
主に狩猟用の狩矢に用いる。
空穂
(うつぼ)
空穂は矢を収納する道具で、植物の穂に見立て、中が空洞になっている。
15本程度の個人携行用から、それ以上の大量の矢を入れるものもある。
戦国時代には、鏑矢2本、征矢22本、尖矢1本の計25本が携帯用ワンセットとしました。


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